コラム「人と経営」
サービスの本質 No.1
1.LCCのサービスとは何か
この夏、ピーチを始めLCC(格安航空会社)が大活躍し、旅客数を伸ばした。一方、大手航空会社は国内の旅客数が減少した。この6月に、LCC老舗S社のサービスコンセプトが物議をかもした。
そのコンセプトは機内誌が入れてある座席のポケットに挿入されていた。
8つの条文が有り、我々の客室乗務員は「より安全に、より安く」をモットーに荷物収納の手伝いや言葉遣いに気を遣いません。
苦情は一切受け付けません。それは、地域にある「消費生活センター」に連絡して下さい。との文言。さすがに、マスコミも取り上げ、行政も抗議をしたので、コンセプトが明記された文書は撤収された。
2.ドメインがコンセプトを定義する
マーケティングを語る時に、よく使われるドメイン(事業領域)と言う概念を使う。我が社は何屋なのか、何を事業として考えているのか。
鉄道会社のドメインを輸送業と捉えると、安全に正確に列車を走らせる。
歴史のある鉄道会社に今も見られるが、朝、改札で社員が大きな声で挨拶をしている。改札以外では、運転手も車掌も一々、乗客に挨拶をしない。それを、サービスだと思っている。
ドメインを「輸送業」では無く「快適な移動空間を提供する事業」と定義すると、サービスの中身が変化する。一律な声かけではなく、乗客に応じた対応・サービスが求められる。
3.安全・安心・定刻は基本サービス
S社の客室乗務員は可哀想だ。何故ならば、安全だけの為に乗っている補助員と言う位置づけなので、わざと手伝いをせずに、無愛想に搭乗する。乗客に感謝を言われたり、声をかけて貰えない。
乗客との接点が無くなれば、やりがいの無い仕事になる。警備員と変わらない。客室乗務員の仕事の楽しみを奪っている。LCCを使うなら、安いから文句を言うな、そんな乗客への挑戦状をS社は突きつける。
S社では無いが今年スタートしたLCCのP社やJ社、特にJ社は欠航が多い。定刻に飛び安全に目的地に着く。これさえも保証出来ないサービスとは何か。客室乗務員の笑顔が無くとも我慢できる。
しかし、客室乗務員が優しく接しても、ブスッとしていてもフライト時間は変わらない。互いに快適な空間を求めるなら、スマイル0円、マクドナルドに学べと言いたい。