コラム「人と経営」
変化対応企業 No.1
1.コンビニの進撃
東日本大震災以降、低迷している小売市場で、進撃を続けている業態がある。全国に数万件あるコンビニで、特に大手3社は好調だ。小売りの主導権を握ってきたスーパー(大手量販店)や百貨店は振るわない。
少し成長に陰りが出ていたコンビニが、どうして新たな成長戦略を描けたのか。最大手S社の動きがその代表であろう。今から38年前、日本で産声を上げたコンビニエンスストア。
コンビニ発祥の米国S社からライセンスを受け、日本独自の発展を遂げた。当初のコンセプトは「あいてて良かったね」。ここ数年、「近くて便利」に変更。単身者や高齢者をも顧客に取り込んだ。
2.競争相手は顧客ニーズの変化
S社の会長は、「我が社の競争相手は、顧客ニーズの変化」だと。競合のR社やF社では無い。
いかに顧客のニーズに応えた商品やサービスを提供するか。常に売り場は変化している。
新しいマーケティングの定義は、「市場変化への全社的な適応行動」である。S社はそのマーケティングを忠実に実践している企業だろう。
最近サービスとして定着したコンビニATM。S社の社内からは反対を受け、金融関係者からは冷ややかな目で見られたS銀行の設立。融資や預金などの金融サービスではなく、ATMの便利さを追求した。
3.新しいサービス
この5月からS社全店で始まった「御用聞きお届けサービス」。町の酒屋や食料品店は、つい20数年前までは普通に御用聞きをしていた。みそ、醤油、お米、お酒他。個別配達の後、1ヶ月まとめて集金が来る。
その御用聞きが復活。弁当や総菜、乳製品、パンやデザート、お菓子に至るまで、自宅に配達をしてくれる。ネットで登録し、注文も可能。近くのS社加盟店の店員が配達をする。
元々、配達サービスは数年前から実験的に実施はしていたが、それほどの利用者も無く、低空飛行。昨年から御用聞きを追加。一気にそのエリア拡げた。
S社は顧客ニーズを先取りし、サービスを展開。実験を繰り返しながら深耕をはかる「仮説実験」が、マーケティング力を更に進化させている。