コラム「人と経営」
福祉国家と高齢化 No.2
1.日本の政策は遠くを見ていない
企業では経営理念や長期のビジョンを掲げ、中長期の計画を立案し、その実施を行っている。
四半期の決算報告会や総会で内外の利害関係者に説明を行う。特に公開企業は開示義務が有り詳細なデータを提示する。
日本の政党に明確な国家ビジョンが無い中で、福祉政策が行政機関主導の元に決められていくと、国民が置き去りにされる。歳入が減り、歳出が増える。社会保障費の切り詰めが行われる。
福祉予算の削減は当然かも知れないが、長期、全体のバランスを良く考えて政策立案しなければ、明るい未来は来ない。超高齢化が進展して行く中で、どんな豊かさや福祉を求めるのか早急な議論が必要だ。
2.福祉企業と呼べる会社
東京港区のシステム構築支援や人的サービスを行うITベンチャーのI社がある。障害者を積極的に雇用し有名な企業だが、昨年3月より10大雇用を促進している(11月からは20大雇用)。
ニート・フリーター、障害者、ワーキングプア、引きこもり、シニア、ボーダーライン、DV被害者、難民、ホームレス、その他就労困難な方の10大雇用の創出を行うと宣言。
障害者などが政府の社会保障に頼らずに働ければ、福祉費用の削減になる。それよりも企業にとっての大きな効果は、障害者が働く喜びを体で表現し、その真摯な仕事への取り組みが他の社員への大きな刺激になる。
3.高齢者に優しい組織
川崎に本社を置くチョークを製造しているN社は、生産現場の多くを知的障害者が占めている。
彼らが働きやすいように生産工程を変更し、不良品を出さないように工夫している。
N社の会長は、障害者雇用で日本一の企業になると理念を語っている。
障害者と健常者が一緒に働くことで、社員が優しくなった。自然と思いやりが出るようになりコミュニケーションが良くいい会社になったと。
これからの高齢化で、多くの高齢者が働く就労現場が現れる。その時に企業や行政組織が、どれだけ優しく高齢者と接し、仕事が出来るのかが問われる。本当のノーマライゼーションが、これから求められる。